歌の焦点
「紫陽花をカメラに収むシルバーの淡き残り香われを魅了す」 (多祢子さん2002/06/26)
短歌は一首で対象の状況から言いたいことまで詠まなければなりません。主題は一つに絞ることが必要でしょう。
この歌だけから添え書きに言われていることを読み取るのは不可能ですね。「シルバー」とは、添え書きによれば初老のご婦人のことなのですね。それが解かっても、歌の前半と後半が意味的に繋がりません。こういう時は、紫陽花の美しさに惹かれてシャッターを切りつづけたことと、紫陽花に魅入られるように眺め尽くす初老のご婦人に爽快感を覚えたこととを分けて、二首連作として詠まれるといいです。もちろん、それぞれが独立、つまり短歌として鑑賞に耐えることが前提です。短歌は字数制限が厳しいですから、無理して二つの主題を一首に詠もうとされると、焦点ボケにもなり、歌としてもすっきりしないものになりますから。