四段活用動詞

「扇風機の分解掃除をする夫の飛ばせし螺子が廊下に光る」(すめーちゃん2006/07/17

夫が扇風機の掃除をしていて、螺子が飛んだと大騒ぎしていました。私も呼ばれて二人で捜しましたが見つからず、他の螺子で間に合わせて一件落着、その夜なんと廊下で光っている螺子を見つけました。先生、飛ば(せし)過去形はこれで良いのでしょうか。宜しくお願いいたします。

機械を分解していざ組み立て直すとネジが余ったりしますが、ここではどこかへ飛んでいったのですね。代替ネジで組み立てたあと、夜中に、捜しても見付からなかったそれが廊下にあったのですね。小物を落としたりすると、捜しても直ぐ見付からず、意外な所にある、ということはわたしもしばしば経験しています。ご質問の件ですが、「飛ばせし」は「飛ばしし」です。「飛ばす」は四段活用動詞なので、過去(回想)の助動詞「き」は(その連体形「し」も)連用形「飛ばし」につきます。但し、サ変動詞「す」やカ変動詞「来」(く)には、「き」の連体形と已然形「し」「しか」は未然形に付きますね。ですから「せし」「こし」、また「せしか」「こしか」です。「来」には連用形「き」にも付ける例があり「きし」「きしか」とも。「する」はサ変動詞「す」の連体形ですが、現在表現ですね。ネジが廊下に光っているのが現在なら、ご夫君が扇風機の分解掃除をされたのは過去ですから、ここは過去表現「せし」がいいです。これは「す」の未然形「せ」に、過去(回想)の助動詞「き」の連体形「し」が付いた形ですね。
 言葉が先にあって、文法はその規則を後追いで作ったものですが、語法(言葉の使い方)を整理したものであり、守るべきものです。例外的用法は例外として、やはり文法に組み入れられています。文法に反する語法は、使われないものなのですね。実際、文法に外れた語法は、読むと必ず違和感があるものです。上のご質問でも「飛ばせし」という言い方が、何だか変、と思われたからですね。

添削:
「扇風機の分解掃除をせし夫の飛ばしし螺子が廊下に光る」 (すめーちゃん)