用言止めは動きが続く

 気丈夫に居酒屋(みせ)を守りし女将(おかみ)なれど
 肺炎病みて寂しき言葉          (迷倫さん
2002年
いつも快活な女主人ですが、肺炎を患らったとたん意外に弱音を吐きました。
終句は「言葉寂しき」の方が流れが良さそうですが「言葉」を強調するため敢えて体言止めにして見ましたが如何でしょうか?

現にまだ「みせ」を守っておられるのですか、それとも病気のため店じまいされたのですか?「守りし」は過去形です。病気のため休店であるとしても、少なくとも「みせ」はいつでも再開できるようになっているのですね。「寂しき言葉」か「言葉寂しき」か、ということですが、その前に、その言葉(弱音)が何なのか、断片でもいいですから、具体的に言われた方がよほど効果があります。
 一般に、名詞ないし体言止めは、思考を停止させます。余韻を封じ込める感じになります。その壁をなお乗り越えて余韻を残すには、言葉の斡旋上の技量がそれなりに要求されます。用言止めでは、動きがつづくので、比較的余韻を残せ易いと言えます。
添削:
「居酒屋の明るく気丈な女将(おかみ)にして肺炎病めば急に弱音吐く」 (迷倫)

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