歌の焦点
「歌ひとつ詠みたき梅雨の昼下がりよみきれぬまま何時かまどろむ」 (桐子さん2002/07/03)
前作に続いてこれもうまい。確かにこの歌では「ひとつ」がいいですね。歌というものがよく解ってきましたね。「よみきれぬまま」の「よみ」は漢字がいいでしょう。「詠みきれぬまま」。行為をはっきりさせるには漢字がいいですから。前に同じ文字がありますが、気にならないし、むしろそれを受けたことがはっきりしていいです。文字の重複という問題も、普遍的規則にはならず、個々の短歌で考えるしかありません。
添削:
「歌ひとつ詠みたき雨の昼下がり詠みきれぬまま何時かまどろむ」 (桐子)
(この場合「梅雨」はちょっとくどい感じを与えます。「雨」でいいですね。そうすれば、梅雨時という特定の季節の枠も外れて歌が生きるという利点も生じます。一般には、時、時期や場所などを具体的に入れて、読者に歌の焦点を与える効果が出ますが、それがいつも成功するという普遍則はないのです。やはり個々の歌で考えるしかありません。)