島の数一万五千ちかくといふ日本もまんざら狭くはあらずか
冷たくて思はずかざす掌(て)あたたかし点けしつもりの電気ストーブ
たまさかに隣家の屋根を走りゐる番(つがひ)のジョウビタキに思はず声掛く
ひたすらに美しきもののみを詠みゆかむ過去生のシミなど拭ひ取るべく
電線が多すぎるなどと嘆くまい 雀・椋鳥(むく)・鳩・鴉などとまりては鳴くよ
その寿命せいぜい百歳の人間が宇宙はいくつも在るなどと論ず
<イムジン河> 曲想にほれて唄ひこしがその歴史知れば涙さそはる
醒めながらやや目眩(めまひ)あり‘赤い雪’空こめて降る夢を見しのち
遠山の雪溶けたりと見つつゐて人らの春恋ふ息遣ひ聞く
「空しい」などと嘆くは生享けた人間の贅沢なたわごとである、とも思うこの頃