「おびただしき銀杏(ぎんなん)落ちゐる寺庭でも妻は拾はぬ 匂ひ苦手と」
「左手のピアニストの演奏に思ひをりやはりピアノは両手で弾くもの」
「日は没(い)りてしばし雲海の縁のみが金色(こんじき)に輝る荘厳を見き」
「この宇宙は千四百億年は大丈夫と天文屋言へり どんな意味ある?」
「台風去りさはやかに晴れて喜ぶは人にまさりて雀子らなり」
「どーどどどッ!今夜の台風は狂乱し <風の又三郎> も顔色なしだ」
「鱗雲、鰯に鯖雲が空おほひ落ちてゆく日に絢爛変化(けんらんへんげ)」
「イスラエルとふ国を創りし煽(あふ)りなる五百万パレスチナ難民をいかにせんとか」
「くさぐさの思考が絡み悩むとき金木犀の香が漂ひ来ぬ」
「いづくかにまた悲劇あり十六夜(いざよひ)のおぼろ満月人を泣かしむ」