絶え間なく西より工事の音聞こえ現場は其方(そなた)と思へば東なり
夜を徹しカラスらが鳴くともすると我が外なるか裡なるかを知らず
歳のせい?否、本能の生命(いのち)への賛美と思へ涙もろきは
(新仮名): こまごまと物持つゆえの物忘れあれ忘れこれ忘れ妻の特技に
落暉つつむ雲の断片の周縁が黄金(わうごん)に燃えわれ衝迫す
ふと気付くあるかなきかの風に鳴る日向の風鈴の幽かなる翳
ひとたびは途絶えし蝉声ふたたびを庭木に響くきびしき残暑に
あなどりて窓辺に坐しゐておどろかさる突然頭上で雷鳴とどろき
群雲を裂きてひろげて光射し暗き人界に生気を惹起す
ささやかな幸かな十日留守せしにやがて雀ら庭に戻り来