「飛水峡、奇岩居並ぶ双壁の割れ目に深き藍色の川」
「妻と来ぬ 小春日和の日曜日ほかに人なきこの飛水峡」
「日々しとど枯葉おとせるメタセコイア先端はなほ緑(あを)きがままに」
「傍行けば鴨らぐわぐわ叫びつつ足取りよたよた吾に寄らむとす」
「煙草吸ひケイタイ掛くる様見えて隣車(となり)のドライバー実は女人なり」
「人工の星もかくやの輝きに暮れ初めし空に金星ひかる」
「西空に異様に光る金星を見詰むればその穴より天見ゆ」
「黄昏の空限りなく澄明なりおのが心もかく濁りなけむ」
「火星はや如何ほど離りゆきたるやなほ赫赫(かくかく)と燃えてはをれど」
「秩序なき星の配置にくさぐさの名を付けし古人の智慧に脱帽」
「殺人鬼をれど平和の使者をらぬ今の世界は不幸ならずや」