何カ月ぶりだろうこの朝の涼風は。写真に撮れるなら撮っておきたい
思へるは役所勤めの三兄が自慢せし‘速記術’今も使はれをるや
驚きぬ吾が生まれし日の‘曜日’をば機械が瞬時に答へたりけり
とうとつに島倉千代子の唄流れ「ああ次兄が好きだったなあ」とつい呟けり
写真に知るベランダの餌を食べに来るはスズメらだけでなく名も知らぬ鳥も
あるドラマでさめざめと泣く乙女子の黒髪にまとはり胡蝶が舞ふなり
八十歳半ばの脳髄を生かすのはその尖端にふるへるトレモロ
さらさらとその末ほつれ乱れつつ小流れがゆく脳の山脈を
ふと思ふ赤子の泣き声は日本人も外国人も同じだらうか
雷雲が頭上にとどまりながながと光りとどろき市民を威す