あさなさなあまたの鳥ら鳴く中に美声にして奇声あり名は知らねども
羽音たて間近に鴉が舞ひ降りぬ何用なのか小首をかしぐ
紫陽花の華の緑の濃くなりてとなりの白紫の花に沈むも
み仏の施無畏印と与願印、真似るだけなら容易なれども
身の裡にばくだん抱ふるごときかな大日輪がじわじわ昇る
たまさかに鏡に向けばありありと「生涯在鏡中」とふ詩句が浮かび
荒井里桜のヴァイオリンの音(ね)のきんきんと宇宙を満たしなほ止まざれば
感慨と気概の「がい」の違ふ意味、人は知るなく大人となりき
カラス二羽ビル屋上に寄り添ひてキスの仕草もなすにあてらる
梧桐(あをぎり)の琴は唐にも日本(やまと)にもありきそが持つ神音(しんいん)ゆゑに