不特定の出詠者より成る歌集になるほど「鈴木」姓の人の多しも
生体は奇跡の秩序を保ちゐる。エントロピー増大の原理に背きて
気がゆるみ不意に浮かぶは自作ならず白秋や柊二の短歌なりけり
冷える朝もアンテナの先にとまっていてカラスはこごえて死なないのだろうか
識閾の奥の奥のまた奥より光ともなひ聞こえくる音
一年間ほどアメリカに住んだことあるがそれが四十年余も前のことだなんて
意志あるごと激しく変化する空模様 高低、多彩な冬の叢雲(むらぐも
落語家の談志の死をばあるニュース「だんしがしんだ」と回文で報じき
戦乱の絶えざる世界を憂ひつつ平和日本をことほぐは罪か
天気予報聞くとき予報士が天候を操りゐるかと錯覚することある