奇矯なる鳴き声あげて闇をゆくは二、三の鴉、夜目効くごとし 何に追はれ星さへもなき闇を飛ぶ鴉の狼狽は今の世のそれ

己が歌を宇宙の果まで響かせたいと宣（のたま）ふ歌手に拍手喝采 旧友が病みて寂しく死に逝けりたかが夢なれどひと日気になる

神域に樹木ら参差（しんさ）と繁り合ひ殖ゆる鴉の塒（ねぐら）となれり

湯舟にてつくづく思ふ食ひし物の変容のはてがこの肉体と

か細きが雲間を泳ぎ消えては生（あ）る。風に吹き飛ばん二日の月これ 雲透かして見るゆえに実像が見えた・・・： 雲透きて浮かぶ三日月かくほどに繊（ほそ）き姿と今にして知る

幸運にもわづかに逸れし台風の他所での被害も少なかれと祈る

餌皿にすだく雀らの喉（のみと）みな黒班小さく稚鳥（わかどり）ならん この宇宙は百四十億光年の大きさなり百キロ上空を宇宙とは如何

紫陽花を剪り来て部屋に飾れるに水よく吸ひ上げしゃんと永く保（も）つ 男とは哀しきものぞ自殺率も女より三、四倍高しと知れば

乏しかる資料は共通、そに基づき古代史論じ合ふは不毛ならずや 新発見あるたび通説が変へらるる古代史なるものの危ふさ思ふ

ものの名の思ひ出だせず姿のみ脳裏に浮かび歯痒きばかり