「マンボウ（翻車魚）」とか「かささぎ（鵲）」「ひたき（鶲）」「ばい（霾）」などの難漢字いまだに健在なるらし

俳句には季語など約束事あるを不思議に思ひ窮屈に感ず

湧きて流れ雨をこぼせる梅雨の雲　せめて心にカビを生（は）やすな

英語辞書引きつつ思ふ今までに一度も開かざるページはありや

見上ぐれば火星を伴ふ満月のこなた見おろす　微笑みながら

妻言へり娘（こ）の住む周辺は学童の成績分布は逆三角形と

重けれど天より賜びて溜めおける雨水を運ぶ花に遣らむと

ある詩想がふいに現れふっと消ゆ思ひ出さむとすれど白濁 胸内に切迫の情起こりしにそれが何なるか知る前に消ゆ

時代・国を超えて宗教と音楽は人とは不可分のものであり経し

住む国土広大なるゆゑ空間に漢詩は展（ひら）き短歌は時間を追ふ 白秋の <まちぼうけ> さへ韓非子（かんぴし）の故事に拠ること知る人少なし