心底(しんそこ)から祈れど殺し合ひはなくならぬ。所詮人間の祈りなればか
「隣り家(や)に残れるあまたの過熟柿に我が家の雀も混じり群がる」
石ころが屋根に並ぶと見えたるは寒風に固まる雀らなりき
うちつけに大きな満月が顔に当たる。日の出前外に出て西方見れば
天気図で南東に低気圧があるときはその方角の空を気にする
真っ直ぐに焼却場よりのぼりゆく仏の煙は重さ無ければ
削り節の薄片食みつつこれほどに鰹を虐ぐる残酷さ思ふ
オーロラに倣ふがに絹雲が空いっぱいにうねりて見る見る形変へゆく
しづしづと夜は更けゆきて樋落つる滴の音に降り初(そ)めし知る
銅色(あかがね)の朝焼け雲が水平に目線の高さで漂うて荘厳