半月の霞に滲むを視つめつつ胸の過半がいぶせくなりぬ

尊かるわれらが遠き祖先をば未開と蔑むはおろかならずや

闇にまぎれ音を落としてジェット機航くそのしづけさが不気味なりけり

国道に沿ふ小花壇にアガパンサスうす紫を刷きて揺れゐる

思へらく例へば破墨山水画は印象派絵画の先駆けならん

「花」を「死」と読み違（たが）ふとふ人が居る。いかなる闇を裡に蔵すや

死してのちも発しし思考の脳波なべて宇宙をさまよひ続くるならむ 滅ぶとも五体なす基本の元素などは消ゆることなく何かに転生す

紫紺の実の紫式部は梅雨のいま薄むらさきの小花を咲かす

森友も <共謀罪> も加計(かけ)もはや報道より消ゆ国会閉ぢて ーーーーーーーーーー 中学生棋士なる藤井四段は不敗でどこまで連勝伸ばすや

<生命（いのち）> とはあり得ぬ奇跡のものなればそを成す何かを‘神’と言ふらん ちょろちょろと小流れ（をながれ）鳴りて飛び交へる蛍を奇跡のものと観てをり