文字なるもの持たざりし古代日本人が隣国から借りて今に至れり
残れるはさまざまな記憶の骨格のみ。有無を言はせぬ「時」の作用よ
思へるは漢字の崩しから平仮名を生みし古人の偉大なること
ある母の言葉に『幼児(おさなご)がとけたように寝てる』と。言い得て絶妙だ
立ち止まり「遠い未来」と聞きたるは「トロイメライ」のことでありたり
自問する彫心鏤骨(ちやうしんるこつ)と言へる仕事あるいは作品は我にありやと
しみじみと <乙女の祈り> を録(と)りゐるに低空を一機が轟音たてて
逆光に黒き翼をきらめかせカラスが視界を横切りゆけり
老いづきて日々平凡であることの物足りなさ否否ありがたきかな
空覆ふ雲海の一隅に奇蹟のごとひとひら小さく青空のぞく