明けやらぬ空を鴉の大群が何かに怯え右往左往す

かのローマ（ＲＯＭＡ）はなんとアモーレ（ＡＭＯＲ）の捩（もぢ）りにて愛よ永遠なれとふ願ひが籠もる （アモーレ（ＡＭＯＲ）は「愛」の意）

ワイエス画 <クリスティーナの世界> の女（ひと）が脚不自由と知ざらりし迂闊

枝枝に団子のやうに雪が乗り隙間隙間にふくら雀ら

「雪やこんこん」は「来い来い」だと言ふ説如何「泉こんこんと湧く」など言ふが

ベランダに出でて眉間を打たれたりクレータさへ見ゆる七日の月に

電子には個性なけれど此の灯ともす電子らの発生地を訝ることあり

武器の‘武’は‘戈’（ほこ）を‘止’むるが字の由来　現実はこれにて殺し合ふなり

帯状の雲の位置ゆるやかに移りゆく空全体が動いてゐるのか

衰ふるは哀しからずや八重桜も老いれば花は一重になるとふ