「この夏は気圧配置が乱れがち雲の変化（へんげ）が殊にうつくし」

「水仙の雁首折れて断末魔あの優美さの余韻すらなし」

「おろかにもその日を知らず朝ごとに鳴きゐし熊蝉いつ止みたるや」

「左手にて弾くピアノ曲あり弾き手あり聴きつつ湧きくる哀しさは何」 「左手用のピアノ曲あれば右手用もあると思へど未だ聞かざる」

「聞きたるは物ごころ着かぬ頃なりき亡母（はは）唱ふ御詠歌いまも耳底（じてい）に」

「“性善説”“性悪説”を天秤にかけつつ‘ひと’は一生（ひとよ）を亘る」

「雀らが泥水呑む見ていつも思ふ我ならばたちまち腹下さんと」

「打上げの音かとのぼり屋上よりビルの間（ま）に見る遠花火のあぶく」

「四十度超す高温など人生で初めての経験を天は与える」 「オーム関係十三名がほぼ一度に死刑執行され気味悪し」

「暑ければ暑いほど蝉らは元気だな。われらほとほと参っているのに」