これほどに美しきもの他にあらじ広大なる実り田に陽はそそぎゐて
ちぢれたる葉に乗る形に花水木の代(よ)を繋がむ朱実ここだ輝く
唐突に或る思念過ぐそののちは人間世界の悲しさの満つ
秋の雨つよくなりゆき金木犀の花みな散らして朱の淵つくる
「劈(つんざ)く」が「突(つ)きさく」ではなく「抓(つ)みさく」の音便なりとは永く知らざりき
‘シクラメン’の俗称はなんと‘豚の饅頭’由来を聞きても納得できぬ
さまざまな人らの歌集を読みて思ふ少し直さば良き歌多しと
意外にも水道水を手に温くく感じて秋の深きを知りぬ
空に浮く池とも見えて楕円の穴乱れ流るる白雲に空(あ)く
あらき風上空を吹き鰯雲鯖雲なべて流れ消えゆく