ふと胸に浮かびし光景 雪しまく大菩薩峠に墓標一つ立つ いつ見ても建築中なりし駅前ビルしばし忘れゐていま建つを知る

花の露見てさへ紅涙に袖濡らしし古人（いにしへびと）の感性羨（とも）し

人々の名を見るたびにご両親の心と期待の篤さを思ふ

月の下方に赤くかがやくは火星ならむその近さゆゑにめづらしと観つ

サイレンに続きマイクで叫ぶ声 晩秋の朝ひどくものものし

ハロウィーンの満月は珍しと騒ぐゆゑデジカメに収む ブルームーンを （今晩は、今月二度目の満月で、ブルームーンと呼び、また最小満月）

朝空をばらばらに占め浮かべるは消えゆく雲の数多（あまた）の残欠

こたびこそ十三夜の月を撮らむとして薄雲流るる隙（ひま）を狙ひぬ

これほどに美しきもの他にあらじ広大なる実り田に陽はそそぎゐて

ちぢれたる葉に乗る形に花水木の代（よ）を繋がむ朱実ここだ輝く