古書に言ふ「“生”（せい）を偸む（ぬすむ）は罪重く“死”を偸むのは罪軽し」とぞ

真つ直ぐに視界よぎりし飛礫（つぶて）ふたつ今年初めて遇ふつばめなりき

中天に浮かぶジュラルミン色の満月を人は四月のピンクムーンと呼ぶ

たちまちに若葉のびこし花水木、花びらのごと総苞散り敷く 総苞も散り果て今は早緑（さみどり）の若葉が覆ひ潤（うるお）ふ花水木

暮れどきの都心の俯瞰写真観てわっと湧き来ぬ‘命’のせつなさ

伸び過ぎしアスパラガスが七支刀のさまに枝枝出して直立す

雨降れば雀の餌に群がり来るナメクジ集め塩振るたつぷり

ちょっとした労に「どっこいしょ」、「また言ったね」と夫婦で言い合う歳になったね

“人界”とふ決して破れぬ壁超えて響かむ短歌を詠まむ野望もつ

奈良県の位置を永らく誤解せり意外に深く紀伊半島を抉る