般若心経に意味ありて無し寂しければ大声で唱ふ二度また三度 並み立てる河岸（かし）の桜らほの赤し花びら覗く無数の蕾

必然か心奥への瞑想は究極で素粒子物理学の極点に中（あた）る －－－－－－ 辻井伸行： 全盲のピアニスト弾く「ラ・カンパネラ」　指の走りは人のものならず

壮大に「万物斉同」を説きし荘子、つまり無限小の正体も観き 物質を無限小にまで分け入れば確率波といふ“無”に到るのみ

宇は空間、宙は時間にしてその中を被造物われら一切がうごめく ミンコフスキーより遙か以前に「時空」をば「宇宙」とふ語にて東洋は捉へし

針先（はりさき）に宇宙観る禅の瞑想と極小粒子に宇宙観る現代科学と 極限の微視化は具象像を拒否すれど身辺のなべては確たる形持つ

思惟はせぬ極微粒子の集積なる“脳”とふ組織が心作用なす 感情のあるべくもなき微粒子の集積なる身が泣き笑ひする

“無数”とか“無段”とかいふはあまりにも多くて数へられざる意味にて “無学”とは本来「もはや学ぶべきもの無し」といふ意味　おろそかならず 未熟にてまだ学ぶべきもの多ければ“有学（うがく）”と言ふべし吾もまたしかり

そのむかし土葬が習ひでありしころ火葬は悪業とされゐしを思ふ 追ひ込まれし弱者はあがきて極悪の所業で何かを訴ふるは さは言へど“イスラム国”が空爆とふ野蛮をせしと聞きしことなし

人間を特別視すまい。雌雄による種（しゅ）の保存方式はほかとかはらず 極めたる進化と誇る人類の殺し合ひの規模は他に類を見ず

偶然に原子集まりて成りしゆゑ「有情（うじゃう）の本質は空（くう）」とは説かれき 「悉皆は空無」と言へるは“煩悩”より解脱させん為の真理の説諭