悔やみけり死の床の弟が兄われに会ひたがりしと後(おく)れて聞きて
中学時代、卵焼きと梅干の弁当をまだ若き長姉がつくり呉れしかな
思へるは役所勤めの三兄が自慢せし‘速記術’今も使はれをるや
とうとつに島倉千代子の唄流れ「ああ次兄が好きだったなあ」とつい呟けり
思へらく妻詠むことの少なきを空気のごとく吾を包むゆゑか
ちまちまと小鉢三つに小さき花咲かせて性格をあらはす娘よ
親・きやうだい 九人がつひにわれ一人に。‘時’は確実に絆切りゆきて
自(し)が妹の訃報を聞けどうろたへぬ妻なれど内心の渦は量(はか)れず
予期せざる妻の妹の訃報うけ壮健時の残像消しがたく居(を)り
妻に・・: 君が居て僕が居ることを当たり前と思える今の幸いを思う