(過去)の助動詞「き」の連体形「し」

>「手折りきし真冬のアザミ元気良く木曾川土手の匂いを放つ」 (ゆう子2004年1月24日

添削: 「手折り来(こ)し真冬のアザミ二十日後も木曾川土手の匂ひを放つ」(ゆう子)

(過去)の助動詞「き」の連体形「し」は、カ変動詞「来(く)」には未然形「こ」につく。なお、ついでに、已然形「しか」は「来(き)しかば」と、連用形「来(き)」につく。終止形「き」は「来(く)」には付かない。前にも書いたけれど、接続の面倒な助動詞だね。要するに、発音してみて、もっとも自然な発音になるような付き方をする(あるいは、付かない)という、至って当たり前なことなのだけれどね。たとえば、終止形「き」を無理やり「来」に付けようとすれば、未然形なら「こき」となり、連用形なら「きき」となって、発音が不自然であり、変ですらある。だから付けない。また、連体形「し」を「来」の連用形「来(き)」につけて「きし」と発音するのは、「こし」と発音するより窮屈だし、ちょっと不自然だよね。だから「こし」と発音するのさ。原理的に言えば、文法の前に言葉があった。話し言葉がね。そういうことです。