短歌界固有の差別語表などありません
「乞食」と言う言葉は今では差別語ではないでしょうか?そうだとすると使用すべきでないと思われます。もっともこの歌の場合「ホ?ムレス」が相応しいとも思えませんが。
私が関係する医療界では使うべきでない差別語がとりわけ身体障害に関連して数多くあります。「めくら、つんぼ、びっこ、気違い」などです。差別語ではありませんが「精神分裂症」も誤解を招きやすいと言う理由で昨年から「統合失調症」に変わりました。「痴呆」と言う言葉はれっきとした医学用語ですが痴呆=「気違い」と取る方も今だ多く患者様と話す時は「物忘れ」などと言い換えます。
一般的に歌壇界では「言葉と人権」「差別語と表現の自由」などに関連して何か一定の見解やガイドラインなどあるのでしょうか。(迷倫さん2003/04/19)
短歌界固有の差別語表などありません。いつかも書きましたように、短歌はよほど制約とか約束事のない(少ない)短詩形です。世間に流布している差別語は、世間的によくないとするのと同じ理由で、短歌には使わないようにするでしょうが、それは短歌界のガイドラインというものではなく、世間的習慣に従うだけです。時には、その効果があると作者が思うときは、誤解を招かない形で差別語とされる語も使うかもしれない。
<乞食>という語、確かに最近はあまり聞かれません。いつの頃からか、<差別語>のリストに登録されて、それが知らない内に世間一般に浸透していったのかもしれない。しかし、言葉というものはあくまでも自然が大切でしょうね。いちいち、あまり言われると、わたしなどは<差別語>という語自体が<差別語>に聞こえてきてしまう。<差別語>で人を差別することが起こり兼ねない。つまり「おまえはいま差別語を使った、けしからん」とかね。すべて、時と場合であり、程度問題でしょうね。特定の悪意などが意識的に篭められた言葉は別として、本来、個々の言葉に色なぞ着いていない。言葉は一人一人の中で生きています。人格そのものかもしれない。そのことを大切にしたいですね。はじめに差別語ありき、ではなく、人を思い遣る気持ちがあれば、どんな言葉でも生きるでしょう。(逆に、思い遣りがなければ、どんな優れた言葉でも死んでしまいます。)わたしはそう思いたい。