口語短歌の課題
俵万智さんのサラダ記念日が大ヒットして口語短歌が大流行り。
ちょっとお洒落な感じの口語短歌に私も挑戦してみたいのですが
どんなことに注意すれば良いのかしら?
「かたときも携帯離さぬ若人に孤独の魅力を教えたくなり」(須美さん2001年7月12日)
「孤独の魅力」というのはちょっときついかな。「良さ」くらいでいいですね。教えたいという衝動は分かりますが、ヘタに口を出そうものなら、いらぬお節介、わたしの勝手でしょ、と反発されそうです。若人と言えど自分の領域にずかずかと入ってこられるのは大変嫌うものですから。
詠み方としては、あまり平坦にならないようにしたいですね。印象が薄くなりますから。そして、特に口語短歌の課題として、詩情と余韻をどう歌に乗せるか。みな悩むところですね。詠い込み習熟する以外ないでしょうね。
添削・改作(梧桐):
「若者はいつも携帯電話(ケイタイ)持ち歩く孤独の良さを拒否するように」 (須美)
これで短歌らしくなりました。歌材がよかったということでもあります。あとはそれをうまく短歌にまとめられるよう修練されることですね。まあ、慣れるということですが。
なお,上の改作では,携帯電話=けいたい、と読ませます。短歌ではよくやる、常用語のルビによる字余り回避です。つまり携帯電話という漢字のルビとして「けいたい」と付けるのです。これは携帯電話のことを「けいたい」と略して言う、いまどきの風潮を利用するものです。携帯と書いただけでは理解されるか不安ですからね。携帯ラジオ、携帯テレビ、携帯パソコンなどなど、馴染みのある携帯なになにという物はいくらでもありますから。
「ようやくに咲きし薔薇ひとつ切りくれし そのさりげなさひそかに嬉し」(あゆ子さん2001年8月7日)
初句「ようやくに咲きし」だから、自分の庭にようやく咲いたととれるし、
「切りくれし」は、切ってくれた、つまり何んらかの事情で自分では切れないのを、ある人(男性?)が切って呉れたととれてしまいます。ただ、後半で、好意が嬉しかったとあるから、やはりこれは初句からその人の庭に咲いたバラのことを言っていたのか、と思い至るという按配です。いずれにしても、幾様にも解釈できるということは、歌い方がまだまずいということですね。(歌によっては、幾様にもとれるように意識的に詠むこともあるでしょうが、ここは違う。)
この歌、背後に無言の言葉のやりとりがあるから、口語向きですね。また、「切る」よりも「剪る」です。はさみなどできるときはこちらが適切です。
添削・改作(梧桐):
「あの日君は「ようやく咲いた」と薔薇一輪さりげなく剪ってわたしに呉れた」 (あゆ子)
いい口語短歌ができました。決して俵万智風ではないです。「ひそかに嬉しい」と言わなくてもそれが伝わりますね。
万智ちゃん風にアレンジして
「一つだけやっと咲かせた赤い薔薇 切ってあたしにくれちゃうあなた」 (あゆ子)
面白い。これだと、相手も女性かな、と思ってしまうけれど。さらに万智風にしましょうか。
相手も女性として・・
「「一つだけやっと咲いたわ、赤い薔薇。あなたにあげる」って?まあ、嬉しいわ」 (あゆ子)
相手は男性として・・・
「「一花(いっか)だけやっと咲いたからあげましょう」無造作にくれるあなたが好きよ」 (あゆ子)
ははは、いくらでもバリエーション可能です。
「呼び捨てで名前を呼べないシャイな君いつまで<さん>でがんばるのかなぁ」(nanamiさん2002年7月6日)
こう来るなら・・・
添削:
「好きなのに・・わたしを呼び捨てできないの?いつまで<さん>でがんばるつもり?」 (nanami)
ははは、このほか色々とバリエーション可能ですね。なかなかピタリと決まらないのは口語短歌の宿命かも。