分水嶺御母衣ダム荘川桜

「高鷲村(たかすむら)分水嶺地点に記しあり。左太平洋、右日本海へと」

「日本の背骨の上に湧き出づる小流れ左右に別れつつ愛(は)し」

「御母衣(みぼろ)とふロックフィルダム満々と水湛へつつ波も渦もなし」

「満々たる御母衣ダム湖の濁り水 湖底に沈む村押し潰す」

「何百の合掌造りが消え去りてその怨念がダム湖を濁す」

「佇めり大樹荘川桜の下 樹齢四百に威圧されつつ」

「ダムに沈む悲劇なりしに人々の愛が老桜(ろうおう)二本を生かす」

「生かされて荘川ふた本桜かな湖底の村の魂(たま)を鎮(しづ)めよ」

「厳粛な老桜に寄りわが妻はにこにことして写真に写る」

「巨大ダムその背面は荒寥の岩肌のみなり河水はいづこ」

生活詠

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