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「「思惑」と書き「しわく」と読むか「おもわく」と読むかで意味は大違いだね」「「橘(たちばな)」は古書によく見る樹木なれど現代の本にはほとんど見掛けぬ」

「たまさかに寄りし小さなギャラリーに加藤卓夫の三彩壺あり」「霜月尽 妻と来りて百彩の‘もみぢ’を堪能す瀬戸・定光寺

「世界はいま新冷戦の時代に入る核戦争の匂ひさへして」「協調より対立を好むリーダーの多く居る世ほど危ふきはなし」

鬱あるや 離合集散なす雲の白猫(はくみやう)とも見え閻魔とも見ゆ

制御不能の山火事が豪州を苦しめをりオペラハウスも煙に霞みて

街外れの小さき喫茶店になんとまあ八千草薫のサインの色紙

阿(おもね)るも生くる術(すべ)なれ さは言へど後(のち)の寂しさ思ひ遣るべし

‘けだもの(獣)’と‘けもの(獣)’の違ひはニュアンスのみなのだらうか 違ふ気もする

厨辺(くりやべ)に黙して並べる食器類に妻の裡なる寂しさの見ゆ

冷えまさり星のなべてをうち消してゴールド・ムーンがぎらぎらと浮く

高層のマンション包む黒幕が剥がされてゆき生まれ変はれり

暁暗(あけやみ)の杜のあたりゆ聞こえきて地響きのごと群鴉(ぐんあ)の騒ぐ

第一回全国高校ダンス大会 限界見せて全チームうつくし

文明が文化を壊すことあらむ文化が文明を潰すは可能か

悩めるは「唯我独尊」の真の意味 辞書にさへ通俗の解釈が載りて

古代より今まで人は何億の人殺したのだろう 総人口いま七十億

動くのは雲塊なれど太陽が雲押しやると見えて陽が射す

路傍にはわれ名も知らぬ雑草の花たち賑やか暖冬うれしと

『里山は“日本人の心”』といふ言葉がいつまでも真であれかし

昨夜(よべ)置きし餌に雀ら集(すだ)きゐてやがて朝陽の及ぶベランダ

究極の癌治療法はDNAレベルなるらむ 確立は何時(いつ)?

さだ過ぎて嘆くとにあらず歳相応可能な事をひたすら為さむ

家前の道をバウンドし通り行くトラックが尾てい骨経て脳髄ゆする

「裏庭の常緑の木に集まれる雀らはいづれも寒さにふくらむ」「冷えまさり“ふくら雀”ら木犀に寄り来る乏しき餌を求めて」「寒ければ“ふくら雀”となりて寄るそれぞれ懸命に命を包み」

朝戸出に見据ゑて心胆冷えにけり雨に濡れ黒々と立つ裸木(はだかぎ)に

進歩はあれ「医術は経験学かつ人間学」とふ根本はつひ