今日の一首

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「茫漠の闇の狭間に一瞬のみ<生>は切なくいぢらしく輝(て)る」

{解説:「遺伝子の二重螺旋の分子鎖のぴらぴらとしてかなし受肉は」とか、「遺伝子の二重螺旋の分子鎖が騒立ちし日に受肉せし身か」とかは、梧桐の旧作です。また、梧桐がかってここにも書きましたように、この自分という生き物は、受精するまでは何もなかったわけで(それまでは無限の闇)、死んで無に帰するのは(それ以降も無限の闇)、ごく自然の成り行きです。この広大無辺の時空世界の中で、生は一瞬でしかなく、むしろ極めて特殊な状態であり、奇蹟であります。ヴェートーベンは臨終に『もっと光を』と叫んだそうですが、死の向こうに深い闇を見ていたからでしょう。空海(弘法大師)も死に臨んで『生れ生れ生れ生れて生の始めに暗く、死に死に死に死んで死の終りに冥(くら)し』と言ったそうです。もとより、あおぎりは空海に比すべき存在ではありませんが、同様な思惟に違いありません。言いたいのは、だからこそ、大きな闇に挟まれた一瞬でしかない生涯は、明るくかがやいているはずのものだということです。時空の膨大さに比すれば、切なくもいじらしいものではありますが。「かがやく」といっても、いわゆる世間的な名誉栄達を言うのではなく、自分としてかがやくのであり、楽しく充実感のあることをいうのでしょう。それでも、一生をかがやかせるには多少の意志と努力が必要でしょうね。}