隣人の死
- 2012.04.04
ゆきやなぎ店先に咲くを見届けず八百屋の主(あるじ)は逝きてしまへり
ゆきやなぎ店先に咲くを見届けず八百屋の主(あるじ)は逝きてしまへり
生(あ)れざるは滅せざる否、生(あ)れもせず滅しもせずとぞ「不生不滅」は
エリート教育受けし者らが知恵絞り大量殺戮兵器も創る
街川も海へ続くを確かめんと行きつ戻りつ妻は振り回す やうやくに着きしは藤前干潟にて鳥群るる果に外洋ひろがる
賛否のなか死刑執行が新聞の一面トップを飾る世となる
広がれる瓦礫の海の底(そこひ)には幾千といふ屍(しかばね)眠るや 引き潮におし流されて海底に万余の屍(しかばね)凍えてをらん 人々に怯えもたらし放射能しみ出てひたひたと広がるらしも 映像に生きて笑へるこの女優は白血病で逝きて四半世紀 奇(くす)しくも9・11が忌日なり嘱望されし女優の夭折 中国の砂漠ロケにて被曝すとも。核実験のせいかもしれずと
この景色どこかで見たな、ああ墓地だ。ある大都会の広角写真に (口語新仮名)
地にありて深夜に仰ぐ天球は光を包む真空の闇
三重の災害受けしこの国を穢土とや言はむ浄土とや言はむ
荒寥たる更地に生ひ立ち自らの意志もて育ちゆくビルの骨