社会詠

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今日の七首

  • 2003.02.16

「歩みつつ風の匂ひも春めきてキラリと光る妻の眦(まなじり)」 「いつよりか背を丸くして歩く癖しばしば妻に言はれ身を反(そ)る」 「不思議なり七日に一日休むこと時代を超えて万国に根付く」 「その昔天地を造り賜うたる神さへ七日にひと日休まる」 (旧約聖書) 「百三十七億歳と現代の科学が宇宙の年齢を定む」 「イラクとか北朝鮮とかは身に余り光と宇宙の謎に没頭せん」 (口語新仮名一首):- 「始まりはあって […]

今日の四首

  • 2003.02.14

「ただいまは冬と春とのせめぎ合ひ山を霞ませスギ花粉飛ぶ」 「<目には目を>イスラム教が米国に伝染せしか<核>辞さじとは」 「戦闘が中東の野を焦がすころ日本は桜か牡丹か百合か」 「冬の街つつめる穹(そら)はただ蒼く渺々(べうべう)として死相を蔵す」

今日の五首 

  • 2003.02.05

正面に見えし三日月いつしかも右に移りて靄に裹(つつ)まる 海底も山もあるのに空間に人住まんとて犠牲相次ぐ 人間の叡智も犠牲を強(し)ふることスペースシャトルの悲劇に知りぬ アメリカは富める国とぞ人言へど貧民窟の多きはいかん 何もかも砕かんほどの武力持つアメリカだけが正義といふか

今日の三首

  • 2003.01.28

「携帯電話(けいたい)にデジカメ付いてデジカメに電話付かないアンフェアじゃないか」 「皮肉なり情報機器の発達が戦争さへもゲームと化すは」 「イラクのこと北朝鮮のことこき混ぜて世界政治のパレット模様」

今日の6首

  • 2003.01.26

「喜べざるアウトソーシングの時代にて首切り容易な勤労者増ゆ」 「妻若く働くことを好めればPC仕事を見付けては為す」 「仕事なきはずの日本に増えてゆくブラジルからの労働人口」 「妻と来し隣の街のスーパー兼レストラン実はブラジル人向け」 「スペイン語商品並ぶ店より見ゆ西に落ちゆく日本の鳥影」 「ハワイとかモンゴルなどから来し力士らいつしか日本の国技席捲す」

今日の3首

  • 2003.01.19

「市中には倒産店舗の日々に増え郊外大きなモール出来行く」 「スーパーが増えしと思ふ間なくして物と娯楽のモール建つなり」 「キラキラの巨大なモールを歩みつつ人の気分は和みゆくのか」

今日の四首 

  • 2003.01.16

「伊吹嶺(いぶきね)をかたまりとなり覆ひたる雲の下方は砕けつつ雪」 「千葉からの客人は言ふ雪の富士秀麗なりしと身振り手振りで」 「誇るべき鉄鋼大手五社さへも二群に纏まる過程急なり」 「構内の池に氷の張る朝は鴨らいづこに遊びてをらむ」

今日の六首

  • 2003.01.12

「青年期十年過ごせし名古屋なれど大須の街は今日が初めて」 「流れつつ白雲かかる本殿の屋根金色(こんじき)に観音を徴(しる)す」 「連れ立てる妻も娘も大分の産(さん)なれば大須の町を楽しむ」 「吾と妻娘(つまこ)大須観音脇にしてトルコ料理を初めて食す」 「街占むるIT機器にホーホーと空に向かひて吠えたくなりぬ」 「身捨つるほどの祖国なぞありやうもなしと知っての自爆テロとか」

今日の10首

  • 2003.01.11

「人も猿も食欲性欲権力欲あれど笑ひは人のみのもの」 「建設と破壊の歴史、憎しみと融和の果の65億人」 「核兵器もつ大国が北鮮の核開発を脅威と言へり」 「国と国争ふときも基底には個々人の喜怒また哀楽がある」 「地平はや春めきをりて近山も遠き山脈も霞む正月」 「長良川支流の岸に佇(た)ちて観ぬ小山頂上人型の松」 「伊自良川淀む水面(みなも)を叩きつつ番(つがひ)小鴨が水遊びする」 「雲の間に見え隠れせ […]

今日の5首

  • 2002.12.30

「民族間宗教間また国と国争ふときの個の人格とは」 「権力や国威と言へる無形なる威圧感には水母(くらげ)にならう」 「街出でて木曽川沿ひに走りつつ乱雲の間に藍の冬空」 「冬黄昏重く渦巻く茜雲超えてイラクも北鮮も見ず」 「木曽川の水やや赤く淀みつつ靄立つ果や 生の渾沌」

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