2006年4月10日
- 2006.04.10
咲けば散るほかなき桜花(はな)を雨打ちて道一面にびっしりと撒く 雨桜観ての帰り路街灯を透かして傘に花びら幾片 傘に享けし多(さは)なる花弁を留守居せし妻にみやげと言へば微笑む
梧桐学が日々詠んだ歌の収納庫です。
咲けば散るほかなき桜花(はな)を雨打ちて道一面にびっしりと撒く 雨桜観ての帰り路街灯を透かして傘に花びら幾片 傘に享けし多(さは)なる花弁を留守居せし妻にみやげと言へば微笑む
一キロもある両岸の桜並木咲きゆく順はランダムにして 今日ひと日強風あれど川沿ひの桜並木は満開を誇る 重たげに枝撓ませて満開の桜は幹のどっしりと構ふ 群がれる花びら貫く枝枝の存在感よ夜桜は殊に 下方より桜花照らされ純白の雲の上辺(うはべ)は闇に溶け入る
春祭の喧騒もよし川岸の桜花(はな)はあくまで静かに咲(ひら)く 祭とて騒ぐ人らの悲哀知れ桜は静かに咲くべかりける 桜の川つねには水なし流すのは花どきのみとは呆るる市政 冷ゆる日が続き夜毎に来て観るにじわりじわりと桜花(はな)ひらきゆく なけなしの馬駆り集め春祭を賑はす大人の健気なる知恵 馬見るは映像のみと慣れて来ていま目の前の春駒を撮る
完成後二ヶ月なるに灯の点る部屋なき裏のビルは何棲む つくづくと生体組織の精妙さ思ひて進化論を疑ふこのごろ 夜十時戸口に置かるる自動車は吾娘(あこ)居る証、見れば安堵す
出でしなの大満月がパチンコの派手なネオンと重なって無様 (新仮名)
路地奥にいくつもありて廃屋の破(や)れ戸より見ゆ床板の反り 震度4襲はば倒れむ老朽の民家点在す裏道行けば 白々と侘助ツバキがさはに咲く地面にころころ落ちゐるも在り これまでに”Gone with the wind”幾たび観しスカーレットとレッドになりて
止みたると思ひし雨のジャンパーをまた打ち始む 打たしめて歩む 闇に居て花を増しゆく苦しさに身悶え花弁を落とす山茶花
しづまれる競輪場に照明塔闇空を背にくらぐらと立つ 競輪の開催中ゆゑ夜さへも怒号と喧騒の余韻が渦巻く ギャンブルは違法と言ひつつ公営の競馬、競輪よたよた続く 塀の上に鉄条網を張り巡らす邸宅あはれ処々に蜘蛛の巣 暗き道歩み来て遭ふかうかうと照れる<世界一安値>の看板
冬の日が新築ビルにやすやすと隠されてゆく 靡けこのビル (ご参考:『・・・妹(いも)が門(かど)見む靡けこの山』(柿本人麻呂;万葉集巻2・131)) 数知れぬ鋭き刃(やいば)に鎧ひたる邸宅ありて闇に鎮座す 生享けしものの悲哀を纏ふがにするどき鉄柵巡らす邸宅 裏町のスナック街へと迷ひ入り優しき声の客引きに会ふ つくづくとこの歳にして思へるは天下無双の妻を得し幸
出掛けどき雨は銀糸を引きゐしが霧となりやがてはたと止みたり