2006年5月11日
- 2006.05.11
花水木は萼にはあらず手触(たふ)るれば人肌のごとしっとりとして 飽きもせず未だに日々(にちにち)幾十人自爆テロにて死ぬイラクなり 自爆テロ記事に飽きたるメディアにて小さく報ず70人死亡と 外壁に沿ひくさぐさの薔薇咲かせこの小医院は心あらはす べっとりと墓地が血塗られ夜陰にあり垣一面の躑躅と知るまで
梧桐学が日々詠んだ歌の収納庫です。
花水木は萼にはあらず手触(たふ)るれば人肌のごとしっとりとして 飽きもせず未だに日々(にちにち)幾十人自爆テロにて死ぬイラクなり 自爆テロ記事に飽きたるメディアにて小さく報ず70人死亡と 外壁に沿ひくさぐさの薔薇咲かせこの小医院は心あらはす べっとりと墓地が血塗られ夜陰にあり垣一面の躑躅と知るまで
逍遥す花の季節を寿ぎて 桃花御衣黄その他もろもろ あでやかなるパチンコ店のネオンより鬼の悲鳴のごとき音たつ
白く照るチューリップの花の内にして小さき蜘蛛の巣を張るあはれ びっしりと紅芝桜の花敷くにひとつ白なる異端かなしき
散り急ぐ桜は遠見に赤さ増す萼の色とは知れどうれしき 咲くに遅速ありしが散るもさもあるべし塊をなし頑張る花あり 八分かた散りし桜ら一樹のみ白冴え冴えと咲き残りたる
咲けば散るほかなき桜花(はな)を雨打ちて道一面にびっしりと撒く 雨桜観ての帰り路街灯を透かして傘に花びら幾片 傘に享けし多(さは)なる花弁を留守居せし妻にみやげと言へば微笑む
一キロもある両岸の桜並木咲きゆく順はランダムにして 今日ひと日強風あれど川沿ひの桜並木は満開を誇る 重たげに枝撓ませて満開の桜は幹のどっしりと構ふ 群がれる花びら貫く枝枝の存在感よ夜桜は殊に 下方より桜花照らされ純白の雲の上辺(うはべ)は闇に溶け入る
春祭の喧騒もよし川岸の桜花(はな)はあくまで静かに咲(ひら)く 祭とて騒ぐ人らの悲哀知れ桜は静かに咲くべかりける 桜の川つねには水なし流すのは花どきのみとは呆るる市政 冷ゆる日が続き夜毎に来て観るにじわりじわりと桜花(はな)ひらきゆく なけなしの馬駆り集め春祭を賑はす大人の健気なる知恵 馬見るは映像のみと慣れて来ていま目の前の春駒を撮る
路地奥にいくつもありて廃屋の破(や)れ戸より見ゆ床板の反り 震度4襲はば倒れむ老朽の民家点在す裏道行けば 白々と侘助ツバキがさはに咲く地面にころころ落ちゐるも在り これまでに”Gone with the wind”幾たび観しスカーレットとレッドになりて
止みたると思ひし雨のジャンパーをまた打ち始む 打たしめて歩む 闇に居て花を増しゆく苦しさに身悶え花弁を落とす山茶花
街燈のほのかな灯を受け白緑の粉噴く桜の老幹の瘤 雨上がり岸の桜ら夜の灯に老いの涙のごときを垂らす