4.推敲によって育て上げる

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表意文字としての漢字の特性

「やはらかきひかりさしこめる窓辺にて検水管を透かしつつ見る」(幸乃さん2001年9月17日) 「検水管」はあまり一般には使わない語ですね。水を使う装置などで、水量や水の状態を目で見て検査・調査するために付けられた透明なガラス管ですね。それを秋の柔らかい日差しに透かして見ているのですね。幸乃さんの仕事の一端がうかがえそうです。「さし込む」は「射し込む」とも,「差し込む」とも書きます。前の方が一層強い […]

推敲について

夕ぐれて夏虫に混ざりこうろぎのひそかに鳴きて我秋を知る (桐子さん2001年8月13日) やはり何がしかの古色が感じられますね。特に結句かな。 添削・改作(梧桐): 「この夕べ夏の虫鳴き蟋蟀も唱和するかな もう秋なんだ」 (桐子) 結句だけ口語(独り言、会話体)として、気持ちを素直に出してみました。 このように、作歌にもさまざまな手法があり、その可能性は無限と言えます。

固さ柔らかさ

炎天や他に音なき蝉時雨人目も草も静まり返りて(桐子さん2001年8月5日) 「他に」は、一読で「たに」と読まれないように、「ほかに」とひらがなが良いですね。また「人目も・・静まりかえりて」はちょっと変です。人目を気にする、人目を憚る、などと言いますが、やはり音ではなく「目」が主体ですから。「他に音なき・・・静まりかえりて」も言葉が重複しています。短歌は字数が限られていますから、こうした無駄は極力避 […]

推敲の仕方

夏になると小さなクチナシの木は丸坊主になります。見れば揚羽の幼虫が元気よく葉っぱを食べています。あげはちょうをみると心が和みます。 「ひらひらと クチナシの木に 舞うあげは ふるさとの香を 探しあてしか 」 (あゆ子さん2001年7月24日) ひらひらと舞う,というのはいかにもその通りですが,あまりにも言い慣れた言葉ですね.もう少し工夫がほしいところです. 添削・改作 「揚羽蝶くちなしの木に纏はり […]

推敲について

「拍手受けご褒美もらうセイウチの甘えし顔もまた花を添え」 (桐子さん2001年7月13日) ご褒美を貰うのなら、甘えるよりも喜ぶのでは?このご褒美は餌の魚かなんかですね。また、このセイウチは美人か美少女セイウチですかね。結句の「花を添え」からそうなりますね。いえ、そんなことは分からない、雄かもしれない、ですって?おやおや。??と、このように、一旦歌にしたものを、自分で批判的に見直すといいと思います […]

推敲の仕方

「風鈴の音と夜風の流れ込む月の光もほの白く見ゆ」 (桐子さんお母様2001年7月9日) 誠に静かな心境ですね。ただ、起承転結のない、事象の平坦な羅列になっています。もう少し起伏をつけましょう。風鈴は「音;おと」より「音;ね」がいいですね。 改作 「風差せば風鈴しづかな音にふるへ月光いよいよ晧さまさり来」 (桐子母)          (音=ね)     (晧さ=しろさ)

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