言いたいことが伝わるように


「中空に紋白蝶は幾重もの羽ばたきとなり耀ひにけり」(むぎぶどう)

目の前の少し高みを紋白蝶が飛んでいました。羽ばたきは日の光を受けて残像となり、
美しく輝いて見えました。

美しく詠もうとされている姿勢は分かります。しかし、お作で「幾重もの羽ばたきとなり」は、この歌の作者であるむぎぶどうさんにだけ
「羽ばたきは日の光を受けて残像とな」って幾重にも見えるのだと理解出来ます。一般には、読者は「幾重もの羽ばたきとなり」は、
何匹も紋白蝶が飛んでいるのだと解しましょう。それでもいいわけですが、「残像」ゆえの「幾重もの羽ばたき」
であることを伝えたいのであれば、そのように詠わねばならないでしょう。歌は、詠むだけではなく、
それを自ら客観的に読んでみて(現場に居合わせない一般の者の立場で読んでみて)
言いたいことが伝わっているのかを確かめることが必要です。作歌に慣れれば、そうしたチェックを自然にしつつ、
歌を詠むようになるものですが。

添削:
日光(ひかげ)受け羽ばたく紋白蝶(もんしろ)
が幾重もの残像成しつつ耀ひてをり
」(むぎぶどう)