歌集紹介 短歌教室 短歌収納庫 短歌添削BBS1 短歌添削BBS2 梧桐学のいい歌ですね ものぐさ談話室 ものぐさBBS ものぐさ歌会 ものぐさ写真館 ものぐさリンク集 プロフィール メール送信 トップページへ

八月の短歌

         八月一日
「自家製のヨーグルトなりと朝食に添へて出す妻 ありがたきかな」

「この宇宙は百三十余億歳とたわいなき事も言ふなり人とふものは」

     
     八月二日
「渡りゆく長良川上花火乱舞 西に三日月しんと鎮まる」

「大玉が破裂し空より河の面(も)をギラギラ焦がす 鮎の絶叫」

「間近にて見し花火いま遥かなる北にあぶくのやうにをどれる」

           八月四日
「唐突に襲ひし暑さに戸惑へる妻なり蝉は喜び鳴けど」

「名古屋−岐阜の蒸し暑さには辟易と大分生まれの妻はぐったり」

「仰ぐ間に育ちゆくなる積乱雲 木曾山脈より中天に及ぶ」

「田をおほふ稲の青葉が回生の烈日吸ひてぐんぐんと伸ぶ」

「雨季過ぎて夏よりもなほゆるぎなき人のいとなみ物のいとなみ」


八月五日
戦争と平和
「観念にとどまる《平和》は具体性もつ《戦争》に所詮かなはぬ」

「《平和》という概念にいかなる具体性持たせられるかが問題である」

「戦争と平和はつまり動と静 また表・裏にして不可分なるか」

「動と静、悪と善、また醜と美など二律背反にして倶に在るもの」

「相矛盾する戦争と平和とを弁証法的に止揚せむ智慧」

      
         八月六日
「しゅわしゅわと蝉鳴く中を広島の原爆忌今日もしづかに暮れて」

「いつしかも外界は闇 炎昼の名残をとどめミンミン蝉鳴く」

「生きてゐる限り世の中激動す無常といふさへなまぬるきほど」


           八月七日
「市街地に自動車よどみ夏の空白鷺一羽日を浴びて翔ぶ」

「前をゆくバンの背中に飛行機がしばし映れる偶然も良し」

「感情のおだしかるとき頭(づ)の奥に惻々と響(な)る《小切子節》よ」 


            八月八日
「街灯も届かぬ闇のくすのきの葉叢に盛んに油蝉鳴く」

「日を好む性(さが)なるはずを油蝉 闇の梢に鳴く狂気あり」

「蝉さへも闇に鳴く世の狂態はそっとしをかむ小市民われは」

          八月十日
「台風は遠退(とほぞ)きたれど木曽川に濁流渦巻き逆光にまぶし」

「河に沿ふ原生林が白鷺の繁殖地にて雛ら羽ばたく」


     八月十一日
「風さほど吹かざりしかど構内は青葉の切れ端広く散らばる」

「増水し濁れる池に鴨家族水草の辺(へ)に寄り添ひて鳴く」

「嘆くとも見えて 満月おほふ雲裂けたる縁に光の滴」


     八月十二日
「逃げ得ずして汗かき目覚めし現実も雲霞のごとく得体の知れぬ」

「ををををと満月厭(いと)ひて喚(おら)ぶなり身の内に棲む餓鬼畜生が」

「流れ雲十五夜の月を撫でてゐて地に臆病な犬吠えやまぬ」

八月十四日
「近付ける火星かがやき満月に寄り添ひをらむ雲の向かふで」

「精霊を迎へ送らむ 地には地の天には天の摂理あるべく」


     八月十五日
「人皆の固唾を呑みて聴き入りし玉音放送が出回る世なり」

〈その録音がテレビやラジオのドラマでさかんに使われ、またCDにして売られるという。〉

「鴨家族子鴨らにはかに成長し芥の池に鬼ごっこをす」
    

          八月十八日
「御嶽山(おんたけ)に己が時間を拾はむと来しがいつしか雲間に迷ふ」

「○○神××神など八百万の神沿道に並ぶ御嶽山(おんたけ)」

「御嶽山(おんたけ)の嶺を裹みて雲塊の激しく動くを妻と観て佇(た)つ」


     八月二十日
「霧雨の開田高原 木曽駒に手触れてにこにこせる妻はよし」

「辿り来し奈良井宿にて中仙道古(ふる)杉並木を二十メートル味はふ」

「塩尻より乗りし高速道路いま夜雨(やう)に煙れどびゅんびゅん飛ばす」        

 

 

 八月二十二日
「フランスに熱射で五千の高齢者死ぬころ日本は冷夏に喘ぎぬ」

「中東にまた殺戮が始まりぬ似而非(えせ)休戦が憎悪増幅」

----------------

「ミンミンを闇に聞きしが朝明けにツクツクホウシ秋の音(ね)をあぐ」

「熊蝉のはたと絶えしは今朝のこと一転狂へる音(ね)に法師蝉」


     八月二十三日
「熊蝉はつひの命を鳴きながら湧き水に似る時間を創る」

「クマゼミとツクツクホウシが競ひあひ暑き朝(あした)を音声(おんじゃう)に浸す」

「あれほどに世を騒がせし蝉声の今か消ゆべくかすかに残る」

            八月二十四日
「直ぐそこまで来ている火星へ未来線宇宙号に乗って行きたい」

「星々にたとへやうなき憧れを抱くは星のかたわれ我ら」

「天球の真洞の闇にあかあかとされど沈沈(ちんちん)たる第四惑星」


     八月二十五日
「激痛も意味ある生の証とぞ終末医療を否定する論」

「人生無意味症候群が現代の最も悪しき病といふ論」

「人生の意味を問ひたきこと自体最も悪しき病といふ論」

    

    


     八月二十七日
「狭き部屋の二重の書棚にぎっしりと本、書類など無粋に並ぶ」

「ある時は越えねばならぬ境界線たれにも在らむ 線路を跨ぐ」

「脳の機序単純なりと説く論あり異議あれどむなし論といふもの」


     八月二十八日
「一国の暴君たりし痴れ者を賞金賭けて捜すはバカだろ」

「世の中が如何にいびつで捩れてても賞金首だけは真っ平ゴメン」

-----------------

「闇黒の池より鈍き悲鳴あがり飛び上がりしは鵺(ぬえ)かお化けか」

  

    

2003年7月へ