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六月の短歌

     六月三日

「〈愛〉といふ甘くもつらき言葉あり。それが育てし技術の重さ」

【NHKテレビ、Xプロジェクトで、〈愛〉をキーワードとするプラズマテレビの開発物語が放映された。】

「吾が妻に幾度も言ひ来し愛といふ言葉の軽さ重さを量る」

「これまでも幾たび〈愛〉が人を救ひまた破滅させしや されど愛かな」

「かって我が唱へし〈愛の工学〉の嗤はれしこと想へば懐かし」

「殺人鬼大統領の持つ力恐れて首脳らやたらと持ち上ぐ」

      六月六日

「腹見せて頭上間近を白鷺が青空を背に大きく羽ばたく」

「大輪の紅花ひらくサボテンに誰(た)が〈孔雀〉とぞ名付けしか月よ」

「つくづくと長居せしかなこのキャンパス、百花繚乱その幾巡を」

      
     六月九日

有松絞:

「伝統といへる無形の血のすぢが古き家並に土蔵に沁み付く」

「手の技のすたるるは惜し 町の人ぽつりとかっての繁栄を言ふ」

「熟練を尊びながらも〈絞り〉さへ機械化しゆく効率の世は」

「祭とて多くの媼工芸士並びて絞りの技を披露す」

「見世物もときには誇りと工芸士ら絞りを実演。ありがたきかも」

「簡易染め出回る今に藍染は二十回もの染め繰返す」

「藍の甕ふたつ尻向け並びをり深々と藍を湛へしはいつ」

「玄々と甕に満ちたる染料の生む藍すなはち世の淵の色」

「有松の祭で買ひしささやかな絞りの品に妻は足りゐる」

     六月十三日

今日は13日の金曜日・・・
「黄信号群れ成し迫るは今われに何の意味ある 飛びて青になれ」

「組織とは蜘蛛の糸なり 今宵むしろ縁なき人らが最も親し」

「自動車を駆りつつ 突然目の前の舗道が崩れむ幻覚に悩む」

「梅雨の雲払ひて出でし満月の煌然として目を焼くものを」

「ほろ酔ひに作(な)す歌幾首こころ処(ど)のよろめきながら作す歌は佳し」

     六月十五日

「螢火のひとつふたつと飛びゐるが暗き池面に映りてあはれ」

「厳(いかめ)しき真清田神社の亀池に遊ぶ螢は市長が賜物(たまもの)」

「ほの光り翔ぶ螢らは蝙蝠の格好の餌と言ふ声を憎む」

     六月十七日

「木霊して談笑をなす女人らは離離たる樹林にこぼれし卵子」

     六月十八日

「雨散らし雨の季節をことほげる空に樅の木緑(あを)く突き出る」

前作『木霊して談笑をなす女人らは離離たる樹林にこぼれし卵子』を受けて・・・
「球追ひてグランド駈くる男らは大地の膣にうごめく精子」

「極微(ごくみ)なる雨粒(あまつぶ)脈打ち乱れとび目にいたく沁む 励まざらめや」

      六月十九日

「スイートピー今朝も塀より五、六本のぞきてピンクの微笑をよこす」

「距離といふ如何ともしがたき無駄なもの今日も自動車(くるま)に喰はせて通ふ」

「往還に田畑(でんぱた)のさま街の景山川草木賞(め)でて来しかな」

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「時分の花咲かせてのちの真の花。世阿弥は〈過程〉を大切にしき」

「『秘するが花秘せずば花なるべからず』と。吾が認識とのずれはいかんせん」

 

 

     六月二十日

「妄念に悩む夕べは火の球やら大接近の火星を恋ひぬ」

     六月二十二日

「家々のびっしり詰る街の朝も意外に多し鳴く鳥類ら」

「大玉の去年の華よ我が家では紫陽花今年は矮小化せり」

「君を詠まん昂(たかぶ)りの中テレビでは石油利権争奪戦の話」

      六月二十四日

「身のめぐり雨粛々と落ちをれど裡なる世界は明るきままに」

     六月二十六日 「玄妙なる五体の妻かもその体調気温と湿度に鋭(と)く反応し」

「大分の山の景色がはぐくみし妻なれば身に山の精棲む」

「山々は雨靄にどっぷりと漬かりゐて湿潤の森は想ひ看るのみ」

    

     六月三十日

「6月ももうおしまいと溜息を衝くがとくだん焦燥はない」

「紫陽花があぢさゐ公園に蔓延し五十がほどの異種の華あふる」

「万を超すアジサイ一斉に花ひらき豪華絢爛に衰へむとす」

「くさぐさのアジサイの中に紅色の〈アリラン〉の名を忘れ得ずをり」

「三ヶ根山スカイラインは両側をアジサイで飾り自動車(くるま)を慰撫す」

「一つ死が大事件なる今の世にフィリピン戦死者の数を言はうか」

「やすやすと記すものかな日本軍比島での死者は五十万余と」

「ゼロ戦は最新鋭の戦闘機 襤褸の残骸さらしをれども」

  

    

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