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平成十五年一月の短歌


     一月一日  

「除夜の鐘果てて沸き立つ年明けの騒擾にひそむ寒き静寂」


     一月二日

「初詣 門前に並ぶ出店にて妻と木の芽田楽を食(は)ぶ」

「風寒き名古屋城郭外にして鴉と雀の間(ま)に鳩遊ぶ」

「形のみ名古屋城成す天守閣峰に金鯱斜陽にかがやく」

「城郭よりのぞく楠大樹の枝空に凍ゆる雪雲を裁つ」

「かって吾が生きし大学横を過ぎプロムナード通りを八事(やごと)へ抜けぬ」

「振り向けば吾が過去茫々先見れば更なる茫々果に縁見ゆ」


     一月三日

「初詣の神社の塀に溢れ咲く山茶花まさに新春の喜瑞」

「みぞれ降り伊吹颪(いぶきおろし)の吹く中を妻とドライブ それなりに楽し」

「大観と林武の〈富士〉観しを新春3日の収穫とせむ」

「正月は夫婦が子供に還りては餅を食ひ他愛なき会話に終始す」


     一月四日

「年初またタスキ引き継ぎ選手らは勝敗超ゆる貌(かほ)にて走る」

「追加せし賀状を投函せんと来てにはかに雪の花を浴びけり」

「年賀状の宛名書きすら深読みし心乱すを愛(う)しとのみ見む」


     一月五日

「岐阜の歌友雪の歌詠み間なくして尾張の地にも激しく落ち来ぬ」

「部屋内(へやぬち)は昨夜(よべ)に変らずテレビ鳴り外に音無く雪乱れ降る」

「灯を消して外の気配に聴き入れば裡(うち)にひびきて雪の音する」


     一月七日

〈口語短歌3首〉

「まだ新年、2003年1月を2002年と打って気付かず」

「初雪が降った翌朝自動車は雪乗せみんなそろそろ動く」

「雪降るのが楽しい妻さ雪掻きを苦にせずガリガリ音立ててする」


     一月十日

「一月の空凝視(みつ)むれば青(あを)の奧
蒼(さう)ありさらに奧に紺ある」

「かくほどに澄める蒼空ありしかと網なす樹木の枝透きて見つ」

「冷ゆる日はメタセコイアの裸木(はだかぎ)が錐(きり)となり空の氷海を突く」


     一月十一日

「人も猿も食欲性欲権力欲あれど笑ひは人のみのもの」

「建設と破壊の歴史、憎しみと融和の果の65億人」

「核兵器もつ大国が北鮮の核開発を脅威と言へり」

「国と国争ふときも基底には個々人の喜怒また哀楽がある」

「地平はや春めきをりて近山も遠き山脈も霞む正月」

「長良川支流の岸に佇(た)ちて観ぬ小山頂上人型の松」

「伊自良川淀む水面(みなも)を叩きつつ番(つがひ)小鴨が水遊びする」

「雲の間に見え隠れせる半月の堕ち行く先に雪嶺光る」

「渡りつつ木曽川橋より見る灯(あかり)何かと問へばラブホテルなりき」

「渡りつつ橋より見下ろす夜の河深部折々冥(くら)くゆらめく」


     一月十二日

「青年期十年過ごせし名古屋なれど大須の街は今日が初めて」

「流れつつ白雲かかる本殿の屋根金色(こんじき)に観音を徴(しる)す」

「連れ立てる妻も娘も大分の産(さん)なれば大須の町を楽しむ」

「吾と妻娘(つまこ)大須観音脇にしてトルコ料理を初めて食す」

「街占むるIT機器にホーホーと空に向かひて吠えたくなりぬ」


「身捨つるほどの祖国なぞありやうもなしと知っての自爆テロとか」


     一月十三日

「遺伝子の不思議述べつつ生あるは死あるがゆゑと科学書に説く」

「妻と娘(こ)と並ぶを見つつ娘(こ)の宿す命の裔(すゑ)の命思へり」

「廈門(あもい)から一時帰省の娘また妻と連れ立ち美術館訪ふ」

「訪ね来て岐阜にゆかりの画家たちの名画にしばし初春を愉しむ」

「美術館前なる図書館入り際に山茶花ひときは赤くしありけり」


     一月十六日

「伊吹嶺(いぶきね)をかたまりとなり覆ひたる雲の下方は砕けつつ雪」

「千葉からの客人は言ふ雪の富士秀麗なりしと身振り手振りで」

「誇るべき鉄鋼大手五社さへも二群に纏まる過程急なり」

「構内の池に氷の張る朝は鴨らいづこに遊びてをらむ」


     一月十七日

「やや疼くひと日の果の脳幹を真綿のやうな瞑想に包む」


     一月十八日

「住む街の奥にある路地辿り行きまだ見ぬ古き町並に出ぬ」

「栄えけむ機織(はたおり)工場、煙突は染色工場なべて空しく」

「冬の日が河の全巾輝かせ橋行く車輛ら虫這ふごとし」

「つね渡る木曽川橋を望めるにその身白銀に照りて息衝く」

「木曽川をやや上り来て二支流に分かるる中に一村栄ゆ」


     一月十九日

「市中には倒産店舗の日々に増え郊外大きなモール出来行く」

「スーパーが増えしと思ふ間なくして物と娯楽のモール建つなり」

「キラキラの巨大なモールを歩みつつ人の気分は和みゆくのか」


     一月二十一日

「山を越え出で来る大きな楕円にして哲学的な陰をもつ月」

「地平からはじき出されて歪む月の蔭の部分は心にて観む」

「上辺にやや翳り見せ浮く月を地平に弾ませ悪路を走る」


     一月二十三日

〈口語一首〉

「期待した昨夜の月はまだなのか星空やけに暗くて深い」

〈文語一首〉

「見ゆる星年々減りて親しかる星座もその名を変へむ日近し」


     一月二十四日

「帰らむとするに俄かにボタン雪落ちきて路灯に砕け散るなり」

「空間にひしめき躍る雪の粉は幸せさうにみな喜々とせり」

「前照灯上げて走るに正面の闇から無数の雪片襲ふ」


     一月二十六日

「喜べざるアウトソーシングの時代にて首切り容易な勤労者増ゆ」

「妻若く働くことを好めればPC仕事を見付けては為す」

「仕事なきはずの日本に増えてゆくブラジルからの労働人口」

「妻と来し隣の街のスーパー兼レストラン実はブラジル人向け」

「スペイン語商品並ぶ店より見ゆ西に落ちゆく日本の鳥影」

「ハワイとかモンゴルなどから来し力士らいつしか日本の国技席捲す」


     一月二十七日

「PCの小箱につまる多機能のほんの一部でわが用は足る」

「PCは操作ミスには無力でも人生にないリセットボタン持つ」


     一月二十八日

「携帯電話(けいたい)にデジカメ付いてデジカメに電話付かないアンフェアじゃないか」

「皮肉なり情報機器の発達が戦争さへもゲームと化すは」

「イラクのこと北朝鮮のことこき混ぜて世界政治のパレット模様」


     一月二十九日

〈新仮名〉

「風にのり細かい雪が降りしきるあとからあとから無蓋の天より」

〈以下旧仮名〉

「暗き闇あくまで深くその果より湧き止まぬ雪は天の泪か」

「積もる雪たちまち凍り舗道には見の限り車が連なり歩く」

「文明の先端なのに雪降れば自動車人よりそろそろ動く」

「ビスマルク、大和など古き巨大艦回顧する番組いときな臭し」


     一月三十日

「積雪の棉の布団に突っ込むに前駆自動車空転するのみ」

「積もりたる新雪の肌しみじみと掌(て)に触れながら天与の温み」

「滂沱たる雪の乱れにまみれつつ宇宙の果に生(あ)るる星恋ふ」

「聖き雪降らす闇空透過する微光のありて街は明るし」

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