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       十二月の短歌
 
     十二月四日
「南半球に来しとふ感じわれになく同じ音調で赤子泣きをり」

「シドニーは処々に残れる英帝の遺物が文化の基底を支ふ」


     十二月十日
「今朝ことに冷えまさりきて遠き山肌のあうとつ〈凹凸〉恥ぢもせず見す」

「帰らんとピロティー出れば半月の青きにうるみ初雪チラつく」

「半弦の月浮きながら今冬の初雪降れり 故なく悲し」


     十二月十一日
「八日間留守にせし間に構内のメタセコイアらみな落葉す」

「近山を斑(まだら)に雪の覆へればなほ山々が迫りてぞ見ゆ」

「初雪のまだらに覆へる山々の皮膚細やかな立体感あり」


     十二月十五日
夕べの富士--
「ゆらゆらと薄暮の空に漂へる雪嶺富士の青きたましひ」

真昼の富士--
「ま青なる冬空に聳(た)ち雪嶺のまばゆき富士山首に雲巻く」
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「熱しつつ論重ぬるに青年に六十路(むそぢ)が勝るを喜ぶべきや」

「経験も未熟な内の幸運に賞にかがやくを芯から喜べず」

「幸運のノーベル賞に幾万の研究者群やや白けしと」

「国税の巨費を使ひて人間(じんかん)に無意味な研究ノーベル賞受く」


     十二月十二日
「真夜中に明滅している電球は歌を忘れたカナリアである」

「クリスマスツリーに無数の豆電球点滅してをりこの忙しさ」

「街中を人奔走す 死の先に生なきことを知るがゆゑなり」


     十二月二三日
口語短歌五首:
「パソコンで年賀状さえ作る世さ味気なくてもプリンター頼り」

「歳末の休日なのに本町で閉店セールをする洋服屋」

「この街では良心的な本屋さん閉店してからもう一年か」

「さびれゆく本町界隈その中で活気放つは百円ショップ」

「かってこの街を支えた織物の工場あとの鋸(のこぎり)屋根よ」


     十二月二十五日
「パソコンはいつか壊れるもう一台用意すべしと妻は言うけど」

「定年後あなたとわたしにパソコンが一台づつあれば安心と妻」

「二十年最善と思ひ通ひ来し道とは別の道発見す」

     十二月二十六日
「気忙(きぜは)しき歳晩の昼PCの前にてしばし目瞑(めつむ)りゐたり」

「頭(づ)の上をがうがうと過ぐる時の音 目開くればただに天井の衣魚(しみ)」

「問はれをり60年は永かりしや答へむとしてやや忸怩たる」

「街の灯に照らされ白く長々と夜空を這へり年焼く煙」

「スポーツマン一瞬の輝きに命賭くかたや漫然として吾が生はあり」


     十二月二十八日
「歳晩と聞けばその韻(いん)身に響きつくづく往く年来む年思ふ」

「定年を間近に控へ組織から疎外されてか退職する人」

「民営化さるる焦りに長老を徒食の輩(やから)に扱ふ組織」

「世代ごと悪化して来ぬ古き良き時代と言ふさへ死語と化したり」

「ハイカラな店建ち並ぶ夜(よ)の道の中ほど暗く墓地残りゐる」


     十二月二十九日
「年末も年始も永き坦々たる時の流れの起伏でさへなし」

「数ヶ月使はぬレコーダー働かず吾が大脳もかくのごときか」

「アメリカは大義名分なきままにイラク爆撃に本気だといふ」

「大国の思惑を私人があれこれと危惧する空しさまたも繰り返す」

「騒乱の色濃きままに年暮れて来む年すでに暗澹たるかな」


     十二月三十日
「民族間宗教間また国と国争ふときの個の人格とは」

「権力や国威と言へる無形なる威圧感には水母(くらげ)にならう」

「街出でて木曽川沿ひに走りつつ乱雲の間に藍の冬空」

「冬黄昏重く渦巻く茜雲超えてイラクも北鮮も見ず」

「木曽川の水やや赤く淀みつつ靄立つ果や 生の渾沌」






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