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       十一月の短歌


     十一月二日

「秋空を斜めに切りてツバメ去る未練、感傷あるべくもなし」

「お祭りのテーマは"Color of・・・"にして若き蛮声秋の雲を裂く」

「借り物のテントで多くの店が出て〈ヴェトナム料理〉の看板も見ゆ」

「若者ら一般市民ら交はりて〈拉致〉〈核問題〉とは無縁の祭」

「出店やらブラスバンドの騒音に池畔を逃げる鶺鴒一羽」


     十一月三日
「関白も現世は夢のまた夢と言へらくや良し←この当たり前」

「大輪の菊の花々並ぶ観て人の限りなき欲望思ふ」
「暮れ急ぐ公園にゐて池に立つさざ波寒き慈悲とも見えつ」


     十一月七日
「低空を飛ぶジェット機の轟音はとても脳内知覚と思へぬ」

「ジェット機の青空つん裂く爆音は音と言ふより物塊である」

「刈り取られ喪失感濃き田園に柿の畑が赤さ増しつつ」


     十一月十三日
娘の結婚ほか

「脅威的発展つづく中国の国土は確かな踏みごたへあり」

「女ひとり異国に恋を育みて今日廈門市(あもいし)で結ばれにけり」

「娘(こ)の夫(つま)は劉を姓とし石材を商ふ青年実業家なり」

「美しき若き女性がウェディングドレスにさらに輝くばかり」

「中国の男を夫(つま)とししなやかに寄り添ひ微塵も不安を見せぬ」

「寄り添うて愛を振り撒く様見れば不安のしこり徐々に融けゆく」

「劉君の母は民族衣装着て華奢(きゃしゃ)ながら芯の強さほの見ゆ」

「妻もまた着慣れぬ和服を身に纏ひ宴(うたげ)のテーブル巡り挨拶」

「幼らは幼どうしで片言の異なる言語で仲良く遊ぶ」

「上海の空気が濁りゐたること帰宅後黄砂の仕業と知りぬ」

「ゴビ砂漠に砂嵐巻きはるばると九州の地に黄砂を降らす」
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「通勤路囲む銀杏並木未だ緑残せりこの秋冷えに」
「構内のメタセコイアの並木みな赤茶けてきぬ晩秋なれば」

「先月はうるさかりしに虫の声この頃はたと止みて寂しゑ」

「雲に張る月の暈(かさ)鋭(と)く明日の雨予知する自然の理法に機微あり」


    十一月十六日
「構内にひときは明るき紅葉を逆光で撮る友のありけり」

「赤銅(しゃくどう)に変はりし水木の傍辺(かたへ)にて山茶花一輪二輪と咲(ひら)く」

「列なせるメタセコイアは同樹齢されど紅葉緑葉混淆」

「通勤路、構内ともに銀杏樹は緑葉まじれど落ち葉こんじき」

「呆と見る曇りて暗き紅葉につと日の射せば彩(いろ)の眩暈」


     十一月十九日
「秋の空かがやきゐたる東天に雲を染めつつ満月浮かぶ」

「満月がゆらめき歪んで見えるのは僕の五感が軟弱なゆえ」

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「その郷(さと)が安全神話の日本なれば娘(こ)は上海でカバン盗られき」

「中国と日本を取り持つ縁(えにし)とぞ言挙げすれど普通のカップル」



    十一月二十日
「新しき仕事成し得ず侘しくも過去の成果をほじくりかへす」

「四次元の時空の真洞へモミヂ葉が影をともなひ果しなく降る」


     十一月二十一日
「星空を西から東に糸引ける人工の雲照らす満月」
「夜空切る糸の雲ありさながらに銀河鉄道の吐く煙かな」


     十一月二十五日
「夜に入りて秋の名残の小糠雨身の外濡らし身の内濡らす」


     十一月二十七日
「奔る雲漏れつつ射せる陽のありて紅葉錦(もみぢにしき)の山肌を舐む」


     十一月二十八日
「幾億年経ても錆びざる金剛の歌創らばや一生(ひとよ)に一首」

「人皆が不老長寿で不死ならば世は太平の桃源郷か」


     十一月二十九日
「雲の上に青き空在り空の上に何があるのか知らぬが不安」

「死ぬために生きているのだ生の果に死が待つなどとゆめ思ふまじ」



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